一流レストランのスーシェフとして働くカティ。夢はいつか自分のレストランを開くこと。だが、シェフと大ゲンカして店を飛び出し、ようやく見つけた職場は移民の少年たちが暮らす自立支援施設だった。質より量、まともな食材も器材すらない。不満をぶつけるカティに施設長のロレンゾは少年たちを調理アシスタントにするアイデアを提案する。フランス語がちょっと苦手な少年たちと、天涯孤独で人づきあいが苦手なカティ。料理が繋げた絆は少年たちの将来だけでなく、一匹狼だったカティの世界も変えてゆく・・・。
移民大国フランス。様々な事情を抱え、危険を冒して単身フランスにたどり着いた未成年の移民たち。彼らを調理師として育成し、フランスでの安定した暮らしを手に入れさせようと奮闘する実在のシェフ、カトリーヌ・グロージャンをモデルに、これまでもフランスが抱える深刻な問題を社会派コメディとして発表してきたルイ=ジュリアン・プティがメガホンを取った。出演はフランスを代表する女優オドレイ・ラミー、『最強のふたり』など日本でも高い人気を誇るフランソワ・クリュゼ、そしてオーディションから選ばれた40人の実際の移民の少年たちだ。レストランを開く夢に向かって突っ走ってきたカティと、自由と平和を求めてフランスへたどり着いた少年たち。ままならない人生に翻弄される彼らがエシャロットとナイフを手にしたとき、予想外の未来図が立ち上がる。料理がハートを熱くする、ドラマチック・キッチン・コメディ!
『社会の片隅で』(18)の撮影以来、フランスにおけるあらゆる形態の統合の問題に興味を持ち続けています。そんな中、プロデューサーのリザ・ベンギーギが、脚本家でありドキュメンタリー作家のソフィー・ベンサドゥンを紹介してくれました。彼女は、同伴者のいない未成年移民の統合というテーマを、料理を通じて描くという映画のアイデアを持っていました。私はこのアイデアをとても面白いと感じ、これまでの映画と同様に、リサーチしてみることにしました。
ソフィーの紹介で、職業高校の教師カトリーヌ・グロージャンに会う機会がありました。彼女は未成年の移民たちにCAP(Certificat d’Aptitude Professionnelle=職業適格証)を取得させフランスでの安定した暮らしを得られるよう手助けする社会活動を行っていました。彼女の強い個性と、生徒に対する教育法を知ったとき、私はこの映画が向かうべき方向を理解しました。この物語を輝かせるためには、難しい背景を持つ若者たちを、色とりどりのキャラクターに対峙させる必要があったのです。
フランス各地を取材している間に出会ったさまざまなシェフからインスピレーションを受け、カティ・マリーは、この世界を統合するためのヒロインになりました。シェフになることを永遠に夢見る料理人で頑固な彼女は、移民の少年たち自立支援施設で数ヶ月を過ごすことになります。彼女はこの物語を通して、自分が持っていると思いもしなかった資質、すなわち「教育力」のおかげで自分の夢を違った形で実現することになります。その結果、施設の中で本当の家族を再現し、自分自身をも満たすことになるのです。
少年たちのキャスティングは、2020年7月から10月まで、パリで行われました。キャスティング・ディレクターが撮影した300人以上の若者たちのインタビュー、つまり300時間分のビデオをすべて見ました。自分の人生や旅路を語るビデオです。私は、この映画のエネルギー源となるような個性を探していたのです。
一次選考の後、150人に会うために演劇のワークショップを開催し、エシャロットテストのシーンをリハーサルしました。そして40人ほどの若者たちに、この映画の出演者に選ばれたことを発表しました。選ばれなかった人たちにもエキストラとして参加してもらいました。台本は渡さず、物語のアウトラインだけを伝えました。彼らの真摯な姿勢と、カティ・マリーというキャラクターを一歩一歩発見していく過程を大切にしたかったのです。
1983年9月6日 英国・ソールズベリー生まれ。2004年にESRA(École Supérieure de Réalisation Audiovisuelle)を卒業後、リュック・ベッソンなど著名な監督のもとで、約30本のフランス映画や国際的な長編映画で助監督を務める。いくつかの短編映画を手掛けた後、2013年に『Discout』でアングレーム映画祭でヴァロワ賞を受賞。本作では食料廃棄を告発し、予告編で得た広告収入をレスト・デュ・クール協会に寄付した。2019年にはホームレス女性のための受け入れセンターの日常を描いた『社会の片隅で』を発表し、フランスで130万人を超える動員を記録し大成功を収めた。
1981年1月19日 セヴェンヌ県アレス生まれ。 2006年にパリ国立演劇学校を卒業後、舞台やテレビで活躍。テレビドラマの世界で活躍の傍ら、自身の一人芝居「Dernières avant Vegas」の成功により映画に進出、大ヒットコメディ『Tout ce qui brille』で主役の一人を務め、セザール賞主演女優賞にノミネートされた。主な出演作品に『フランス、幸せのメソッド』(11)、『美女と野獣』(14)、『アラジン~新たなる冒険』(15)、『愛しき人生のつくりかた』(15)、『社会の片隅で』(18)、『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(18)など。
1955年9月21日パリ生まれ。幼い頃に見た舞台「ラ・マンチャの男」がきっかけで俳優に憧れ、17歳で高校を卒業するといくつかの演劇学校で演技を学び1973年に舞台デビュー。クロード・シャブロル、トニー・ガトリフ、クレール・ドゥニ、ベルトラン・タヴェルニエ、ブリエ、アルトマン、ギョーム・カネ、セドリック・クラピッシュなど錚々たる監督たちの作品に出演。『最強のふたり』(11)ではフランス国内で2000万人を動員する大成功を収めた。主な出演作は『主婦マリーがしたこと』(88)、『美しすぎて』(89)、『愛の地獄』(94)、『唇を閉ざせ』(06)、『PARIS』(08)、『君のいないサマーデイズ』(10)など。